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土佐絵日記

えびふらい

エビフライ

 

最初の日記、方向性やニュアンスを探るためにとりあえず書いてみる。

 

土佐山田の定食屋の事を書いてみようと思う。ついこの間の事なのに店の名前も思い出せない、つまりはそういう感じのお店である。素晴らしく美味しいとか、夢に出るほど不味いという事もない、まあまあ普通に美味しいお店という事である。

写真をご覧になってわかる通り、頼んだのはエビフライ定食。見てわからない部分を説明しておくと、この定食は「並」でこれよりも位の高い「上」というのもある。人間の性質とは最良でも最悪でも無く、おおよそ凡なるところ、つまりは並である。自分を恐れ多くも「上」などと言う事自体がその人物を「上」なる境地から遠ざける卑しい考え方である。では、「上」とは何か?それはやはり生まれの高貴な方、殿「上」人が食するから「上」ではないかと思われる。田舎に殿上人がいらっしゃるとなれば、上へ下への大騒ぎである。

注文をすると、打ち上げ花火が上がるのを合図に、店の奥からサンバカーニバルの衣装を着た女の人たち大勢やってきて、自分たちの周りを本場さながらに熱狂の渦に巻き込み、我々が目を白黒させている間に、厨房から神輿を担いだ男衆が「セイヤ!セイヤ!」と威勢良くやってきて、神輿から恭しく伊勢海老のエビフライを乗せた定食を食卓におろし、そのエビフライを店に仕えて数十年の老執事が隣に座って、ひと口ひと口を切り分けて食べさせてくれるのだと思う。

かつて、昭和天皇陛下が戦艦長門で南紀伊に行幸なされた時、祝砲と市民総出の万歳で迎えた事を考えれば、これくらいは小規模すぎるだろうが、私にはそんな事でも十分困るので、「並」にした。

 

さて、味の方は普通。粗めのパン粉が洋食のエビフライというよりも、天ぷらっぽさを醸し出すのが個性くらいで、実に普通にだった。お店の名前を思い出せないくらいに普通な味だけど、そういう普通さが定食屋さんに求められる価値なのだろう。そういう意味ではこのお店も立派な「並」である。

 

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